僕はポケモンマスターになれない(僕とポケモンとポケモンGO)

2016年7月22日金曜日、ついに日本でポケモンGOがリリースされた。

でも、僕はきっとポケモンマスターにはなれない。

少なくとも、ポケモンGOの世界では。

 

 

僕とポケモンの出会いは小学生時代に遡る。

近所の兄貴分が僕に「ポケモンって知ってるか」とゲームに誘ってくれたのが出会いだった。

最初に知ったポケモンニドラン♂、特別お気に入りのポケモンも居るにはいたが、とにかくどんなポケモンも大好きで、自由帳を151匹で埋め尽くした自作のポケモン図鑑が自慢だった。

もう現実とアニメの分別はつく年齢だったけれど、ポケモンたちと困難を乗り越えて旅をする空想は何より楽しかった。

空想に留まらず、いつかこの世界でポケモンに出会える日が来ることを本気で夢見ていたのかもしれないね。

 

そんな調子だから学校で『みんなの将来の職業は何だろう』なんて話題になった時に、周りの皆には

「○○はお花屋さんだね」「△△は社長だな!(今思えば、社長は肩書きであって職業ではない)」と各々おおよそ現実的(?)な職種をあてがわれていく中で、

僕の将来については皆が口をそろえて『お前はポケモンマスターな!』と言い出す始末だった。

これも、今思えば少なからず馬鹿にされていたのかもしれないけれど、僕は『ポケモンに関して特別な奴』と認定された様でうれしかった。

特別と言ったって、ポケモンは「あの頃すっごく流行っていた」し、そんなこと言われた奴はどこの学校にも結構いたんじゃないかなとは思うけれど。

 

 

そんな僕は、世間一般的に言うところの『いい大人』な歳になった今でもポケモンが好きだ。

だから、ポケモンGOリリースの噂を聞いた時は「ついに僕の世界にポケモンがやってきた!」と心が躍った。

もちろんベータテストにも応募したし、ベータ当選通知が来た時は、理解ある友人さえ顔をひきつらせるほど狂喜乱舞したのだ。

実際のところ、僕の住む地域が過疎気味かつ仕事が繁忙期であったこともあり、ベータ時にはポケモンを数十匹ゲットしたに留まり、「本リリースしたらポケモンGO漬けの生活を送ってやるぜ!」とベータ終了からの日々を過ごしていた。

 

来る7月22日のリリースを受けて、満を持して近所の公園に赴いた。

普段は子供もさして多くないその公園に、画面を見つめうろうろする大人たちや子供たちが少なからずたむろっていた。

特に誰かが誰かに迷惑をかけていたとかそういうことはなかったのだけれど、その不思議な光景は僕に「僕が思っていたのと何かが違う」と気付かせるには十分だった。

とは言えあんなに楽しみにしていたポケモンGOなのだから、としばらくの間、飛び出してきたやせいのポケモンを捕まえ続ける。

ポッポ、コラッタコラッタドードーイーブイコラッタ、・・・。

あんなに楽しみにしていたポケモンゲット、思っていたより興奮しない。

 

結局携帯をしまってすごすごと公園をあとにし、帰りの道すがら遭遇したポケモン・・・ではなく野良ネコ殿に対し、彼らから警戒されない程度に距離を置いた場所にしずかに座って時間を過ごす、ポケモンGOならぬ『ネコGO』をプレイしてから帰宅した。

(僕はネコ殿と仲良くなる術を知らないし、ストレスもかけちゃ悪いと思うので、こういう関わり方をしている。)

 

 

そうして気付いたのだが、僕の夢見ていたことは、ポケモンを捕まえてコレクションしたり、ポケモンバトルで強くなることじゃなくて、「ポケモンと仲良くなる」ということだったのだ。

 

それは、きのう捕まえたコラッタときょう捕まえたコラッタは違うってことだし、

きみのピカチュウと僕のピカチュウは違うってことだし、

誰かとこのバタフリーを交換する時にはさよならすることに胸が痛んだりする、

そういうことだと思う。

ポケモンを連れるってことは、エサの事やけがのことも責任を負わなきゃいけないだろうし、でもだからこそ楽しいんじゃないかな。

 

僕はそういう意味でポケモンと旅に出たかったし、慣れてもらえるまで警戒されてわざを放たれたりしながら、「こいつとどうやって仲良くなろうかな」なんて首をひねりたかったのだ。

そう、皆さんご存知の、アニメの最初の頃のツンツンしたピカチュウがサトシに電撃をかましまくったように。

そのピカチュウとサトシもオニスズメの一件を経てゆっくりと仲良くなっていったように。

「いい大人が」って、笑われるかもしれないけれど、僕はそういう夢を見ていたいんだ。

 

 

そういうわけで、(ポケモンGOの世界で)僕はきっとポケモンマスターにはなれないし、『僕の夢見るポケモン』が登場するにはもうちょっと時間がかかるみたい。

 

でも、ポケモンGOはきっとその夢への懸け橋になってくれると思うし、

何より、ポケモン楽しいなって思う人が増えたり、

ポケモンが好きだったことを思い出した人がいっぱい出てきたりしている現状を見て、

今、僕はとてもうれしいんだ。

 

 

僕はやっぱりポケモンが大好きです。

いつか僕と僕のポケモンとで、旅ができるといいな。